STUDY
現場に出る前に、
言葉から覚える。
入社してまず戸惑うのは、作業そのものより「言葉」です。元請と下請、主任技術者と監理技術者、 経審、前払金、安全施工サイクル。どれも現場で毎日使われますが、学校では習いません。 新入社員向けテキストの内容を、ジャンル別に整理しました。入社前に読んでおく必要はありません。 入社後、分からない言葉が出てきたときに戻ってくるページです。
01 — INDUSTRY
建設業という産業。
建設業は、社会資本の整備・維持管理の担い手であると同時に、地域の経済と雇用を支えています。 災害時には最前線で安全・安心の確保を担う「地域の守り手」でもあります。
社会的役割
建設業は、国民生活や経済活動に必要不可欠な社会資本の整備・維持管理の担い手です。産業基盤(道路・鉄道・港湾・空港)、生活基盤(電気・ガス・上下水道・住宅・病院・学校)、通信基盤(電話・インターネット回線・衛星通信)、国土保全(治山・治水・海岸整備)に分かれます。
社会資本は高度経済成長期(1955〜73年)に集中的に整備されたため、今後急速に老朽化します。建設後50年以上経過する施設の割合は、道路橋(約73万橋)で2023年3月の約37%が2040年3月には約75%へ。トンネル(約1万2千本)は約25%→約52%、河川管理施設(約2万8千施設)は約22%→約65%、水道管路(約74万km)は約9%→約41%、下水道管渠(約49万km)は約7%→約34%、港湾施設(約6万2千施設)は約27%→約68%。一斉に老朽化するインフラを計画的に維持管理・更新することが求められています。
近年頻発・激甚化する台風や集中豪雨、地震に対応するため、建設業は防災対策や災害復旧活動に従事します。多くの建設企業は地元建設業団体を通じて公共発注者と災害協定を締結しており、災害が発生すると協定に基づいていち早く現場に駆けつけ、災害箇所の点検と初期対応に取り掛かります。また、速やかに復旧活動を始めるためにBCP(事業継続計画)を策定し、定期的に訓練を行っています。
日本経済と建設業
建設工事には鋼材・コンクリート・合板などの資材が使われ、その生産には粗鋼・セメント・木材などの素材、燃料や電力、さらに資材を運ぶ物流が必要になります。建設業は他産業と密接に結び付いており、日本経済を支える重要な産業の一つです。
建設投資は1992年度の84兆円をピークに減少傾向にありましたが、2011年度より持ち直しています。2024年度の建設投資が国内総生産に占める割合は11.8%となる見込みです。(出典:国土交通省「令和6年度(2024年度)建設投資見通し」)
2024年の建設業就業者数は477万人で、総就業者数6,781万人の7.0%です。地区別に見ると、南関東6.0%・近畿6.0%・東海6.8%に対し、その他の地域は8.3%。建設業が特に地方部における雇用の受皿となっていることが分かります。(出典:総務省「労働力調査」2024年平均)
業界の特徴
建設業は顧客の注文を受けてから工事を開始し、同じ条件下で同じ物件を施工することがない、典型的な個別受注生産の産業です。在庫を抱える必要がなく販売リスクを伴わない一方で、資材を大量に一括購入できないため調達価格が安くならない、計画的に受注できない、工事1件当たりの金額が大きく年ごとに受注高の変動が激しい、といった面があります。
工事ごとに施工場所が異なるため、一定の箇所に工場を持って生産する製造業と違い、機械や労働力の効率的な投入が難しいといわれています。また建築工事の一部を除いて現場の大半が屋外であるため、季節・天候などの気象条件や、土地の地形・地質などの地理的要因の影響を大きく受けます。
建設工事は様々な工種を組み合わせて行われ、工事ごとに個別に設計するため必要な工種もその都度変わります。そのため専門的技術や技能を持った下請企業(協力会社)と協力する分業体制が中心です。元請企業は工種ごとに下請企業へ外注し、下請企業も必要に応じて工事の一部を更に外注するため、2次・3次と重層構造が形成されます。
建設業の許可業者数は全国で483,700業者(2025年3月末現在)。内訳は個人事業主13.9%、資本金1,000万円未満49.3%、1,000〜2,000万円19.9%、2,000〜5,000万円13.2%、5,000万〜1億円2.6%、1億円以上1.1%。建設企業全体の約99%が資本金1億円未満の中小企業および個人事業主であり、建設業は中小企業の存在なくして成り立たない産業です。
02 — LAW
建設業法と、許可のしくみ。
建設業法は、建設工事の適正な施工の確保と建設業の健全な発達を促進することで、 公共の福祉の増進に寄与することを目的としています。建設工事に携わる全ての関係者が遵守します。
法律の目的と関係法令
「この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。」 建設業法に規定されている主な事項は、許可制度の実施、請負契約の適正化(下請負人の保護・一括下請負の禁止)、紛争の処理、施工技術の確保(技術者制度)、経営事項審査の実施、建設業者等に対する監督、中央建設業審議会の設置です。
建築基準法…建築物の敷地・構造・設備・用途の最低基準を定め、国民の生命・健康・財産の保護を図る法律。
労働基準法…労働者を保護するため、労働条件の最低基準(労働契約・賃金・労働時間・休憩・休日・災害補償・労働時間の上限など)を定めた法律。
労働安全衛生法…労働災害を防止するために必要な安全と衛生の措置(安全衛生管理体制・特定元方事業者・作業主任者・安全衛生教育・ストレスチェック制度・足場の安全など)を定めた法律。
建設副産物関係法令…廃棄物処理法、資源有効利用促進法、建設リサイクル法。
建設業の許可
経営業務の管理責任者…常勤の役員が、建設業に関する経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有すること。
社会保険加入…健康保険・厚生年金保険・雇用保険に加入していること。
営業所専任技術者…各営業所に一定の資格又は経験を有する技術者を専任で配置すること。
誠実性…請負契約に関して不正又は不誠実な行為をするおそれが明らかな者でないこと。
財産的基礎…請負契約を履行するに足る財産的基礎又は金銭的信用を有していること。
欠格要件に当たらないこと…許可取消しから一定期間を経過しない者、禁固以上の刑に処せられてから一定期間を経過しない者など。
建設業許可の有効期間は5年です。更新する場合は、有効期間満了の30日前までに許可申請書を提出する必要があります。なお、軽微な建設工事のみを施工する場合は、許可を取得する必要はありません。
大臣許可…2つ以上の都道府県に営業所を設置して建設業を営む者。知事許可…1つの都道府県のみに営業所を設置して建設業を営む者。
また、発注者から直接請け負う1件の建設工事につき、下請企業へ発注する金額によって区分されます。特定建設業許可…発注者から直接建設工事を請け負い、かつ総額5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上の下請契約を締結して施工しようとする場合に必要。一般建設業許可…上記以外。
① 許可行政庁への届出義務(毎事業年度終了後4か月以内の変更届出書、重要事項の変更届)
② 標識(建設業の許可票)の掲示義務
③ 帳簿の備付け・保存及び営業に関する図書の保存義務
④ 契約締結に関する義務(着工前書面契約の徹底、不当に低い請負代金の強制の禁止、資材等の購入先の不当な指定の禁止、著しく短い工期の禁止)
⑤ 建設工事現場における施工体制等に関する義務(監理技術者等の配置・専任配置、一括下請負の禁止、施工体制台帳・施工体系図の作成、下請負人への指導)
⑥ 下請代金の支払に関する義務(支払期日、支払期日の特例、割引困難な手形による支払の禁止)
金額の基準
数字だけ先に覚えるなら、この4つです。「建築一式工事だけ別の数字」という形が多いので、 セットで覚えると混乱しません。
| 軽微な建設工事 許可がなくても施工できる | 建築一式工事:1件の請負金額が1,500万円未満、又は延べ面積150㎡未満の木造住宅工事 建築一式工事以外:1件の請負金額が500万円未満建設業法施行令第1条の2 |
|---|---|
| 特定建設業の許可が要る 会社が持つ許可の種類の話 | 発注者から直接請け負い、かつ下請契約の請負金額の合計が5,000万円(建築一式工事は8,000万円)以上となる場合建設業法第26条第2項。「特定建設業の許可を持っている=いつも監理技術者を置く」ではありません。その現場に誰を置くかは、下の「現場に置く技術者」の早見表をご覧ください |
| 監理技術者等の専任 原則。他の現場と兼務できない | 公共性のある重要な建設工事で、工事1件の請負金額が4,500万円(建築一式工事は9,000万円)以上元請の監理技術者等も、下請の主任技術者も、どちらも専任が求められます |
| 2現場まで兼務できる 上の専任に対する例外(特例1号) | 各建設工事の請負代金の額が1億円(建築一式工事は2億円)未満であること建設業法第26条第3項第1号。これは8つある要件のうちの1つで、残り7つも満たす必要があります(下の「現場に置く技術者」を参照)。つまり4,500万円以上でも、要件を全部満たせば2現場まで兼務できます |
03 — ENGINEER
現場に置く技術者。
建設企業は、適正な施工を確保するため、技術面での管理者を工事現場に配置しなければなりません。 主任技術者・監理技術者・監理技術者補佐の3つがあります。
3つの立場
建設業許可業者が建設工事を施工する場合には、元請・下請、請負金額の大小に関わらず(1件の請負金額が500万円未満の軽微な工事であっても)、工事現場における施工の技術的な管理を行う者として、必ず主任技術者を配置しなければなりません(建設業法第26条第1項)。1級又は2級国家資格の保有、一定の要件を満たした実務経験などが必要です。
元請企業が締結する下請契約の請負金額の合計が5,000万円(建築一式工事の場合は8,000万円)以上となる場合には、特定建設業の許可が必要になるとともに、主任技術者ではなく監理技術者を配置しなければなりません(建設業法第26条第2項)。指定建設業(土木一式・建築一式・舗装・鋼構造物・管・電気・造園の7業種)では1級国家資格などが必要です。それ以外の22業種は、一定の要件を満たした指導監督的な実務経験が必要になります。
監理技術者が行うべき職務について基礎的な知識・能力を有すると認められる者です。具体的には、主任技術者の資格を有する者のうち1級の技術検定の第一次検定に合格した者(1級施工管理技士補)、または1級施工管理技士等の国家資格者・学歴や実務経験により監理技術者の資格を有する者のいずれかである必要があります。
「主任技術者及び監理技術者は、工事現場における建設工事を適正に実施するため、当該建設工事の施工計画の作成、工程管理、品質管理その他の技術上の管理及び当該建設工事の施工に従事する者の技術上の指導監督の職務を誠実に行わなければならない。」
配置の考え方
監理技術者が必要になるのは「元請」だけです。2次下請への発注総額が5,000万円以上となっても、1次下請は元請ではないため、配置が必要な技術者は主任技術者になります。また、請負金額500万円未満の軽微な工事であっても、建設業許可を受けた建設業者であれば主任技術者の配置が必要です。逆に、許可を受けていない業者には配置義務がありません。
専任とは、他の工事現場に係る職務を兼務せず、勤務中は常時継続的に当該工事現場に係る職務にのみ従事することです。当該工事現場にて業務を行うことが基本と考えられますが、必ずしも常駐(現場施工の稼働中、特別の理由がある場合を除き常時継続的に現場に滞在していること)を必要とするものではありません。なお、営業所の専任技術者は、現場における専任の監理技術者等にはなれません。(国土交通省 監理技術者制度運用マニュアル三(1))
複数現場の兼務特例
公共性のある重要な建設工事のうち密接な関係のある2つ以上の建設工事を、同一の建設業者が同一の場所又は近接した場所で施工する場合は、同一の主任技術者がこれらの工事を管理することができます(専任の監理技術者は適用外)。「密接な関係のある工事」とは、工作物に一体性若しくは連続性が認められる工事、または施工に当たり相互に調整を要する工事。「近接した場所」とは、工事現場の相互の間隔が10km程度の場合。専任が必要な工事を含む場合、管理できる工事の数は原則2件程度です。
① 各建設工事の請負代金の額が1億円未満(建築一式工事は2億円未満)であること
② 現場間の距離が、1日で巡回可能かつ移動時間が概ね2時間以内であること
③ 当該建設業者が注文者となった下請契約から数えて、下請次数が3次以内であること
④ 監理技術者等との連絡その他必要な措置を講ずるための者(連絡員)を配置していること
⑤ 当該工事現場の施工体制を確認できる情報通信技術の措置を講じていること
⑥ 人員の配置を示す計画書を作成し、現場に据え置いていること
⑦ 現場以外の場所から現場状況を確認するための情報通信機器を設置していること
⑧ 兼務する工事の数が2を超えないこと
※ 専任特例2号との併用はできません。
監理技術者補佐を工事現場に専任で配置した場合には、監理技術者は2つの現場の兼務が可能となります。工事1・工事2それぞれに専任の監理技術者補佐を置き、監理技術者が両方を見る形です。専任特例1号との併用はできません。
発注金額別に、誰を置くか
いちばん間違えやすいところです。置く技術者を決めるのは「会社がどの許可を持っているか」ではなく、 その元請工事で下請にいくら出すかです。特定建設業の許可を持っていても、 下請発注の合計が5,000万円未満なら、置くのは主任技術者になります。
| 元請で、下請発注の合計が 5,000万円以上 ※建築一式工事は8,000万円。特定建設業の許可が必要 |
監理技術者(及び監理技術者補佐)指定建設業の7業種(土木一式・建築一式・管・鋼構造物・舗装・電気・造園)では、1級国家資格者か国土交通大臣特別認定者に限られ、実務経験では代えられません。それ以外の22業種は、指導監督的な実務経験でも可です |
|---|---|
| 元請で、下請発注の合計が 5,000万円未満 ※特定建設業の許可を持っていても、この場合はこちら |
主任技術者一般建設業の許可でも同じです。なお一般建設業は5,000万円以上の下請契約そのものが結べません |
| 下請として工事を請けたとき 1次下請・2次下請を問わず |
主任技術者2次下請への発注総額が5,000万円以上になっても、1次下請は「元請」ではないため監理技術者にはなりません。特定専門工事の下請負人は配置不要です |
| 請負金額500万円未満の 軽微な工事 許可を受けた建設業者が施工する場合 |
主任技術者金額の大小に関わらず必要です(建設業法第26条第1項)。許可を受けていない業者には配置義務がありません |
| 現場専任が必要になる線 置いた技術者を、他の現場と兼務させられるか |
監理技術者・(特定専門工事以外の)主任技術者:公共性のある重要な建設工事で請負金額4,500万円(建築一式工事は9,000万円)以上の工事 監理技術者補佐・特定専門工事の主任技術者:配置される全ての工事ただし専任特例1号・2号の要件を満たせば、2現場まで兼務できます(上の「複数現場の兼務特例」を参照) |
04 — EVALUATION
経営事項審査(経審)。
公共工事を元請として請け負おうとする建設企業が、必ず受けなければならない審査です。 当社の受注のほとんどは公共工事なので、経審の点数は会社にとって重要な指標になります。
しくみ
公共発注機関は、入札参加に必要な資格基準を定め、入札参加を希望する建設企業の資格審査を定期的に行っています。この資格審査では、建設企業の「客観的事項」と「主観的事項」の2つの審査結果を総合的に勘案して格付が行われます。このうち「客観的事項」を審査する手続が経審です。経審は許可行政庁に申請し、総合評定値(P)が出ます。その結果が競争参加資格審査(公共工事の発注者に申請)の客観点として使われ、主観点と合わせた総合点数で格付が決まります。
X1(経営規模)…許可を受けた業種の工事の種類別年間平均完成工事高の評点。
X2(経営規模)…自己資本額(純資産合計の額)点数と平均利益額点数を加えた値を2で除して求めた評点。
Y(経営状況)…経営状況の評点。
Z(技術力)…建設業の種類別の技術職員の数と、工事の種類別年間平均元請完成工事高の評点。
W(その他・社会性等)…建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組など8の審査項目の点数を算出し、合計値を所定の計算式にあてはめた評点。
P(総合評定値)…客観的事項の審査結果。
P = 0.25X1 + 0.15X2 + 0.20Y + 0.25Z + 0.15W
完成工事高や自己資本額といった企業規模だけではなく、利益や技術力、さらに社会的責任を果たしている企業を評価する観点から地域貢献や労働福祉を重視した項目など、企業経営の実態をより反映した評価体系になっています。経審では、許可を受けている建設業の業種ごとに審査が行われ、それぞれの業種に対応した総合評定値が算出されます。
Z(技術力)は技術職員の数で決まり、W(社会性等)には「建設工事の担い手の育成及び確保に関する取組」が含まれます。資格を取ること、後輩を育てることが、そのまま会社の評点になり、受注できる工事の規模につながります。個人の成長が会社の数字に直結する、分かりやすい構造です。
05 — PUBLIC WORKS
公共工事のしくみ。
公告から落札、契約、施工、引渡しまで。入札方法や落札者の決定方式、 工事代金の受け取り方まで、公共工事には決まった流れがあります。
建設工事の関係者
発注者…工事を最初に建設業者に依頼する者。国土交通省や地方自治体などの公共機関、民間企業、個人。
元請企業…発注者から直接工事を請け負った建設企業。請け負った工事を進めるために協力会社へ工事の一部を注文し、資材会社や機材会社を手配します。
協力会社…元請企業が請け負った工事のうち、一部の工種を請け負った建設企業。下請企業と呼ばれることもあります。
建設コンサルタント…施工箇所の調査や測量、建設物の設計などを行う者。施工管理や建築物の維持管理を行うこともあります。
資材会社・機材会社…工事に必要な資材を販売する者、重機などの機材を販売・貸出しする者。
建設工事の関係者には、工事現場の近隣住民も含まれます。近隣住民への配慮を怠ると、クレームなどのトラブルの発生につながりかねません。大きな騒音や振動が生じると予想される工事や、周辺の建物や地盤に影響を及ぼす可能性がある工事などを行う場合は、特に配慮が必要です。丁寧な説明を行い、事前に理解を求めます。
入札と落札
① 一般競争入札…入札参加資格があれば誰でも参加できる方法。地域要件、格付要件などを付した条件付一般競争入札が主流です。
② 指名競争入札…発注者から指名された建設企業だけが参加できる方法。
③ 随意契約…緊急の必要により競争に付すことが適当でない場合などに、特定の建設企業へ発注する方法。
公共工事の入札は従来、指名競争入札が主流でしたが、入札制度改革によって現在は一般競争入札が主流です。
① 価格競争方式…価格提案のみを求め、最も価格の低い入札者を落札者とする方式。
② 総合評価落札方式…価格提案と技術提案を総合的に評価し、最も評価の高い者を落札者とする方式。公共工事の品質を確保するために設けられました。
③ 技術提案・交渉方式…技術提案を募集し、最も優れた提案を行った者を優先交渉権者とし、その者と価格や施工方法を交渉の上、契約の相手先を決定する方式。交通を止められない幹線道路上の高架橋工事など、厳しい条件下で高度な技術が必要とされる工事のために考案されました。
公告 →(速やかに)入札説明書の配布開始 →(10日)申請書及び資料の提出 →(10日)競争参加資格の確認 → 競争参加資格の確認結果の通知 →(7日※)参加資格がないと認めた理由の説明請求 →(10日)理由の説明請求に係る回答 →(9日)入札 → 入札結果の公表(落札)。※行政機関の休日を含みません。建設企業は入札までに工事費の積算などをする必要がありますが、各手続の期間は比較的短く設定されているため、迅速な対応が必要になります。
インターネット上のシステムを用いて公告・入札・開札・落札結果の公表などを行うことです。公共工事の入札では電子入札が主流で、国土交通省などの国の機関や都道府県、市区町村で採用されています。発注者・建設企業双方にコストと時間の削減というメリットがあり、入札の透明性や効率化にも役立っています。参加するには事前に電子証明書を取得しておく必要があります。
契約から引渡し、お金の流れ
契約…落札決定後、発注者と約款に基づき請負契約を締結します。
施工(現場管理)…品質管理、原価管理、工程管理、安全管理、環境保全管理を行いながら、下請企業と協力して工事を工期内に完成させます。
中間検査…工事施工中に、設計図書・仕様書どおりに施工されていることを確認するため、発注者から受けます。
完成検査…工事完成後に発注者から受け、検査合格後に建設物を引き渡します。
建設工事では、工事完成前に下請企業や資材会社などに支払が発生します。工事金額が大きく工期も長いため、建設企業の資金負担は非常に大きくなります。そのため公共工事では、着手時に前払金(通常、請負金額の40%)、施工途中に中間前払金(請負金額の20%)、部分払金を請求することができ、残りの代金は引渡し後に受領します。前払金・中間前払金を請求する場合は、「公共工事の前払金保証事業に関する法律」に基づき、保証事業会社の保証が必要です。
前払金以外にも、中小・中堅建設企業の資金繰りを支援する制度があります。工事代金債権を担保に融資を受けられる「地域建設業経営強化融資制度」や、取引先に対して有する債権を保証する「下請債権保全支援事業」などです。
06 — CIVIL ENGINEERING
土木工事の流れ。
土木工事は、道路・橋梁・港湾など社会資本整備に関するもので、その多くは公共工事として発注されます。 2024年度の土木工事の建設投資は約25.8兆円の見通しで、うち公共工事が約18.6兆円、民間工事が約7.2兆円です。 ここでは道路舗装工事を例に、順番を追って見ていきます。
着工まで
工事をスムーズに進めるために行う調査です。施工計画書の作成に先立ち、自然条件・環境条件などの現場条件や、設計図・設計書・共通仕様書などの契約条件について調査を行います。
工事の安全性、効率性を高める目的で作成される書類です。工事概要、計画工程表、現場組織表などから構成されています。
施工(道路舗装工事の例)
現場内の安全確保のため、事前に工事標識・工事予告看板などを設置するとともに、近隣住民に工事に対する理解と協力をお願いします。また、工事の規模に応じ、現場事務所の設置や資材・機材置き場を確保します。
所定の深さまで地盤を掘削します。その後、路床に不陸(不揃い)が生じないように路床を転圧するなどの整形作業を行います。掘削により発生した残土は、産業廃棄物に該当するものを除き、発注者が指定する場所に持ち込みます。
路床の整形後、路盤材(砕石など)を下層路盤、上層路盤の順に敷均し、転圧します。上層路盤は交通荷重を均一に分散させ下層に伝え、下層路盤は上層路盤の荷重を分散して路床に伝えることで、表層の破壊を防ぎます。最後に安定剤を散布して表層部(アスファルト)との剥離防止、強度確保を行います。
路盤工事が終わると、アスファルト混合物を敷均し、ローラーなどで締め固めます。交通量の多い国道などでは、表層に加わる交通荷重を路盤に均一に伝達するため、路盤と表層の間に基層・中間層を設けるのが一般的です(上から 表層/中間層/基層/上層路盤/下層路盤/路床)。
センターラインや横断歩道の白線などを引いて仕上げます。
工事完成後、設計図書・仕様書どおりに施工されたことの検査を発注者から受け、検査合格後に建設物を引き渡します。
つくった後の話
アスファルト舗装は、土・砂の地面に比べて硬度や耐性が大幅に高いものの、継続して負荷が掛かり続けると小さな力であってももろく、容易に変形する性質があります。交通量過多、舗装素材の劣化、路床や路盤の経年変化などにより、ひび割れ、わだち掘れ(アスファルト混合物の摩耗)、ポットホール(くぼみ、へこみ)などが発生します。補修には、①切削オーバーレイ舗装(表層・基層の一部を軽く削り取り施工し直す)②打換え(表層・基層を剥がし、上層路盤又は下層路盤まで整えてから施工し直す)③オーバーレイ舗装(劣化した表面に新しいアスファルトを塗り重ねる)といった工法が採られています。
07 — SITE MANAGEMENT
現場管理の、5本柱。
工事現場では、発注者、工事監理者、元請企業、協力会社がそれぞれ仕事を進めています。 工事全体が適正に進むよう現場を指揮するのが現場管理で、元請企業の施工管理技術者が行います。 品質・原価・工程・安全・環境保全の5つに分かれます。
現場管理とは
適正な作業指示、工程に沿った進捗管理、品質や安全の確保に向けた管理などを行い、工事全体がスムーズに進むよう現場を指揮することをいいます。そのときどきの施工状況に対応する能力が求められるため、現場全体の状況を的確に把握する知識や経験が不可欠です。また、工事監理者や協力会社の監督者など多くの人と直接関わるため、普段からコミュニケーションを取り、良好な人間関係を築くことも重要になります。
5つの管理
発注者が要求する品質(設計図書や工事仕様書に示された内容)を満たす建設物を造るために必要な管理です。品質管理計画に定めた品質検査を実施し、材料の品質試験及び各種の施工試験を行います。
工事現場が生み出す利益を増やすために行う管理です。工事原価を集計するだけでなく、実行予算を編成し、予算を超過しないように資材・機械の調達などを行います。また、毎日の作業員の人数、資材・機械の投入量、出来上がった仕事の量を記録し、平均的な作業原価(歩掛)と比較し確認することも重要です。
完了期日までに工事を完成させるため、様々な作業の日程を調整し、全体の施工スケジュールを管理することです。各作業の所要時間や作業員・資材・機械の効率的な投入方法などを勘案して工程表を作成し、さらに月間・週間単位での作業内容や進捗目標を定め、工事の進捗を管理します。
墜落・落下などの事故防止対策、じん肺・熱中症などの業務上疾病予防対策などに必要な管理です。元請企業は現場の安全に関して統括的に管理する安全衛生協議会(災害防止協議会)を組織し、労働安全衛生法に定められた安全教育や自社で定めた安全教育を実施します。危険予知訓練、作業中の巡視、安全工程会議、5S運動などを実施して、無事故・無災害現場を目標に活動します。
工事現場を取り巻く地域の生活環境や自然環境への負荷をできるだけ小さくするために必要な管理です。大きな騒音や振動が発生する作業では、法令に基づく規制基準を遵守するだけでなく、影響が及ぶ住民の方々に作業スケジュールを示すなど、良好なコミュニケーションを心掛けます。また、工事現場から発生する泥水などで生態系を破壊しないよう、事前調査時に自然環境と施工方法を関連付けるなど、環境への負荷を最小限にとどめます。
08 — SAFETY
安全は、いちばん上にある。
建設業の現場では、安全(人命尊重)を最も重視しています。 法律や規則を遵守し、日々の安全衛生管理活動により危険を排除して、 誰もが安心して働くことができる現場環境をつくります。
なぜ最優先なのか
建設業は他産業に比べ労働災害が多く発生し、死亡災害を始めとする重大な労働災害が多いという特徴を持っています。一たび労働災害が発生すると、負傷した労働者本人の人生だけでなく、その家族や関係者の人生をも脅かします。また、労働災害が発生した現場では再発防止対策を講ずるまで工事を再開できないだけでなく、公共工事の入札参加の停止処分を受けるなど、企業経営にも重大な影響を及ぼします。さらに死亡事故などを起こすと、「人命を軽視している企業である」と報道やSNSにより広まり、社会的信用を失うことにもなります。
建設業の現場では、元請企業や協力会社の労働者が数多く混在して作業をしているのが一般的です。このため、異なる指揮命令系統や重層構造などにより安全指示が伝わりにくく、労働災害が発生しやすい環境にあります。労働安全衛生法では、元請企業に対して、協力会社の労働者を含めた安全衛生管理体制を整備するよう求めています。具体的には、①協議組織の設置・運営 ②作業間の連絡・調整 ③作業場所の巡視 ④協力会社が行う安全衛生教育に対する指導・援助の実施(法第30条)、足場・クレーンなどの安全確保(法第31条)、協力会社が安衛法に違反しないよう指導すること(法第29条)などです。
事業者…事業を行う者で労働者を使用する者。法人の場合は法人そのもののことで、元請企業・協力会社それぞれが該当します。
労働者…事業又は事務所で使用される者で、賃金を支払われる者。一人親方は事業主であり、労働者ではありません。ただし労働安全衛生規則等の改正により、2023年4月から、危険有害な作業を行う事業者は、作業を請け負わせる一人親方に対しても、労働者と同等の保護措置を実施することが義務付けられました。
安全施工サイクル(毎日)
安全朝礼 → 安全ミーティング → 作業開始前点検 → 作業中の巡視 → 安全工程打合せ →(作業中の指導・監督)→ 持ち場の後片付け → 終業時の確認 → 翌日の安全朝礼へ。作業手順をパターン化し、作業員の判断に頼る部分を少なくすることで、判断ミスによる労働災害の発生や品質の劣化を防ぎます。
作業開始前に全員が集合し、所長などの挨拶に続いて、当日の作業の予定、危険を伴う作業や立入禁止場所などが伝達されます。安全な作業を行うための準備運動や、作業員の健康状態をチェックするために、ラジオ体操を行うのが通例です。全員で行うことで現場の一体感を醸成し、現場全体の安全意識を高める大切な活動です。
各作業班が作業場所へ移動し、これから行う作業にどのような危険が潜んでいるのか、それに対してどう対策するのかを確認します。事前に危険を予知することをKY(危険予知)といい、現場で活動する前に行う勉強会をKYT(危険予知訓練)、その日の現場で作業開始前に行うものをKYK(危険予知活動)といいます。安全を先取りするための、非常に大切な活動です。
作業を開始する前には、必ず自分の作業場所と工具などを点検します。仮設物や複数の作業員が使用する機械器具は時間の経過とともに状態が変わり、作業場所は夜間の降雨や強風によって不安全な状態になることもあります。ただ見渡すだけではなく、きちんと指差呼称しながら確認することが大切です。危険を発見したら、安全な状態になるよう是正されるまで作業をしてはいけません。
作業中の巡視…元請企業の安全担当者が各作業場所を巡視し、作業員の配置状況、足場、作業床、通路、機械器具などを点検して安全日誌に記入します。不安全状態や不安全行動に関する指示・指導は文書で残し、是正されたかどうかの確認を必ず行います。
安全工程打合せ…元請企業の担当者と各協力会社の職長が一緒に行う打合せ。工事の進捗状況や作業状況を把握し、当日・翌日の作業内容などを確認します。一般的には、当日と翌日の作業を考慮できる昼前後に行われます。決定した安全対策や指示事項は、翌日の安全朝礼や安全ミーティングで作業員に伝えます。
各作業班は必ず持ち場の整理整頓を行い、後片付けをします。整理整頓は安全の基本であり、労働災害の防止になるとともに、作業効率の向上にもつながります。最後に、作業終了の確認を元請企業の安全担当者が行い、一日の作業が終了します。なお、毎日のサイクルに加え、毎週(週間点検・週間工程打合せ・一斉片付け・災害防止協議会)、毎月(月次災害防止協議会)の安全活動も行います。
現場の安全活動
安全性や正確性を確認すべき場面では、必ず指差呼称を行います。①対象物を見て(背筋を伸ばして腰に手を当てる)②指で差して(「○○」と唱え、腕を伸ばして人差し指で差し、対象物をしっかり見る)③指を耳元まで振り上げて(間違いがないかあらためて確認する)④振り下ろす(確認できたら「よし!」と唱える)。自然にできるように、現場全体で習慣付けることが重要です。
整理・整頓・清掃・清潔・躾の頭文字をとった安全活動です。整理…物の要否を区別し、不要な物を捨てること。整頓…必要な物がすぐ取り出せるよう置場を決め、使った物はすぐに元の場所に戻しておくこと。清掃…現場や近隣をきれいにすること。清潔…整理・整頓・清掃(3S)が正しく行われ、常にきれいな状態が保たれていること。躾…決められたルールを守り習慣化すること。現場を常に整理・整頓された状態に保つことが安全の基本であり、作業の効率化も期待できます。
「ヒヤリ・ハット」とは、事故には至らなかったものの危険だと感じた出来事のことです。ハインリッヒの法則(1:29:300の法則)では、1件の重大な事故があるとすれば、同じ原因の29件の軽微な事故があり、さらに300件の怪我に至らなかったヒヤリ・ハットがあるとされています。事例を安全朝礼などで報告して情報の蓄積や共有化を図ることが、ヒューマンエラーを防ぐことにつながります。
ヒューマンエラー発生の12要因:無知・未経験・不慣れ/場面行動本能/危険軽視・慣れ/パニック/不注意/錯覚/連絡不足/中高年の機能低下/集団欠陥/疲労など/近道・省略行動本能/単調作業による意識低下。
事業場にある危険性や有害性の特定、リスクの見積り、優先度の設定、リスク低減措置の決定という一連の手順です。労働安全衛生法第28条の2で、建設業等の事業者はリスクアセスメント及びその結果に基づく措置の実施に取り組むことが努力義務とされています。流れは、当該工事の危険性又は有害性の特定 → リスクの見積り → リスク低減措置内容の検討 → リスク低減措置の決定と実施。
熱中症は、高温多湿な環境下で発汗による体温調節がうまく働かなくなり、体内に熱が籠った状態です。めまい・失神、筋肉痛・筋肉の硬直、大量の発汗、頭痛・吐き気・倦怠感、意識障害・痙攣・手足の運動障害、高体温などの症状が現れます。軽症なら涼しいところで横になり水分・塩分を補給することで回復しますが、重症になると医療機関への搬送が必要となり、命に関わることもあります。屋外工事が多い建設業は、熱中症による死傷者数(2020〜2024年)に占める割合が20.4%と高く、十分な対策が必要です。作業場所で実測したWBGT値(暑さ指数)を身体作業強度に応じた基準値と比較し、超える場合は予防対策を実施します。熱中症のおそれのある者を発見した場合は、現場で定められている手順や連絡体制に基づき、連絡や救護等の措置を行います。
09 — APPENDIX
資料。
覚えるものではなく、必要になったときに引くものです。
建設工事の種類(29業種)
1 土木一式工事/2 建築一式工事/3 大工工事/4 左官工事/5 とび・土工・コンクリート工事/6 石工事/7 屋根工事/8 電気工事/9 管工事/10 タイル・れんが・ブロック工事/11 鋼構造物工事/12 鉄筋工事/13 舗装工事/14 しゅんせつ工事/15 板金工事/16 ガラス工事/17 塗装工事/18 防水工事/19 内装仕上工事/20 機械器具設置工事/21 熱絶縁工事/22 電気通信工事/23 造園工事/24 さく井工事/25 建具工事/26 水道施設工事/27 消防施設工事/28 清掃施設工事/29 解体工事(建設業法第3条)
土木一式工事…総合的な企画、指導、調整のもとに土木工作物を建設する工事(補修、改造又は解体する工事を含む)。
とび・土工・コンクリート工事…足場の組立て、重量物のクレーン等による運搬配置、鉄骨等の組立て/くい打ち、くい抜き、場所打ぐい/土砂等の掘削、盛上げ、締固め/コンクリートにより工作物を築造する工事/その他基礎的ないしは準備的工事(地すべり防止工事、地盤改良工事、土留め工事、吹付け工事、法面保護工事、道路付属物設置工事、外構工事、アンカー工事など)。
舗装工事…道路等の地盤面をアスファルト、コンクリート、砂、砂利、砕石等により舗装する工事(アスファルト舗装工事、コンクリート舗装工事、ブロック舗装工事、路盤築造工事)。
鋼構造物工事…形鋼、鋼板等の鋼材の加工又は組立てにより工作物を築造する工事(鉄骨工事、橋梁工事、鉄塔工事、閘門・水門等の門扉設置工事など)。
(出典:国土交通省「建設業許可事務ガイドライン」2025年2月改正)
技術者制度の早見
指定建設業(7業種)…土木一式、建築一式、管、鋼構造物、舗装、電気、造園。特定建設業で監理技術者となるには1級国家資格者(又は国土交通大臣特別認定者)が必要で、実務経験では代えられません。
それ以外の22業種…特定建設業の技術者は、1級国家資格者のほか、指導監督的な実務経験による資格も認められます。
一般建設業の技術者(主任技術者)の資格要件は、①1級・2級国家資格者 ②登録基幹技能者等 ③指定学科+実務経験(3年又は5年) ④実務経験(10年)のいずれかです。
(出典:国土交通省関東地方整備局「建設工事の適正な施工を確保するための建設業法」令和7.2版)
※ このページは、建設業の新入社員向けテキストおよび国土交通省・総務省・厚生労働省の公表資料をもとに、 当社の新入社員がつまずきやすい順に並べ直したものです。数値は出典の公表時点のものです。 制度は改正されるため、実務では必ず最新の法令・通達をご確認ください。 仕事の中身については仕事を知る、 入社後の学び方については成長を知るもあわせてご覧ください。