STUDY

建設業のきほん

入社してまず戸惑うのは、作業そのものより「言葉」です。元請と下請、主任技術者と監理技術者、前払金、安全施工サイクル。どれも現場で毎日使われますが、学校では習いません。新入社員向けテキストの内容を、図と表にして並べ直しました。入社前に読んでおく必要はありません。分からない言葉が出てきたときに戻ってくるページです。

01 — INDUSTRY

建設業という産業。

道路も橋も水道も、いつか必ず古くなります。つくることと、直しながら使い続けること。その両方を引き受けているのが建設業です。まず、産業としての輪郭を数字で見ます。

1経済に占める大きさ

建設投資は、国内総生産の11.8%

2024年度の見通し。鋼材・コンクリート・輸送・機械まで含めると、関わる産業はさらに広がります

2働いている人

就業者477万人。全就業者の7.0%

南関東・近畿・東海は6%前後、それ以外の地域は8.3%。地方ほど雇用の受け皿になっています

3会社の数と規模

許可業者は全国で483,700社

資本金1億円未満の会社と個人事業主で約99%。旭建設もこの中の1社です(2025年3月末)

4災害が起きたとき

協定に基づき、まっ先に現場へ向かう

多くの建設会社が公共発注者と災害協定を結び、点検と初期対応にあたります。「地域の守り手」と呼ばれる理由です

これから、一斉に古くなる 建設後50年以上になる施設の割合。左=2023年3月/右=2040年3月
  • 道路橋37% → 75%
  • トンネル25% → 52%
  • 河川の施設22% → 65%
  • 港湾の施設27% → 68%
  • 水道管9% → 41%
  • 下水道管7% → 34%

高度経済成長期(1955〜73年)に一斉に造られたので、古くなるのも一斉です。直し続ける仕事が、これから増えます。

ほかの産業と違うところ

  • 個別受注生産注文を受けてから造る。同じ条件で同じ物を二度造ることがない
  • 現地屋外生産工場ではなく現場で、しかも大半が屋外。天気と地形に左右される
  • 分業と重層構造工種ごとに専門の協力会社へ。2次・3次と層ができる
  • 中小企業が約99%地元の会社が地元を直す。だから地域に根を張る

02 — ENGINEER

現場に置く技術者。

建設業の許可を受けた会社が工事を施工するときは、金額の大小にかかわらず、技術面の管理者を現場に置かなければなりません(建設業法第26条)。置くのは次の3つのどれかです。

置く技術者は、この表で決まる
その工事を請けた立場 その工事で下請に出す金額の合計 現場に置く技術者
元請発注者から直接請けた 5,000万円以上建築一式工事は8,000万円以上 監理技術者会社に特定建設業の許可が必要。監理技術者補佐を置く形もあります
元請発注者から直接請けた 5,000万円未満下請に出さない場合も含みます 主任技術者会社が特定建設業の許可を持っていても、この工事では主任技術者です
下請1次・2次などを問わない 金額に関係なく自分が2次下請へ5,000万円以上出しても同じです 主任技術者元請ではないので、監理技術者にはなりません

決めるのは「会社が持っている許可」ではありません。その工事で下請にいくら出すか、です。

専任 と 常駐 は違う

専任は「ほかの現場の仕事を兼ねない」こと。勤務中ずっとその現場に居続ける(常駐)ことまでは求められていません。なお、営業所の専任技術者は現場の専任にはなれません。

専任が必要になる線

公共性のある重要な工事で、請負金額 4,500万円(建築一式工事は 9,000万円)以上。監理技術者補佐と特定専門工事の主任技術者は、配置される全ての工事で専任です。

03 — PUBLIC WORKS

公共工事のしくみ。

公共工事は、発注者が「この工事をします」と公告するところから始まります。手続の日数まで決まっていて、その間に工事費を積算して入札に臨みます。

公告から引渡しまで 右上の日数は、前の手続からの標準的な日数(行政機関の休日を含みません)
  1. 01公告工事の内容と条件が公表される
  2. 02参加申請申請書と資料を出す
  3. 03資格の確認参加できるかが通知される
  4. 04入札・開札落札者が決まり、結果が公表される
  5. 05契約約款に基づいて請負契約を結ぶ
  6. 06施工中間検査を受けながら工期内に仕上げる
  7. 07完成検査・引渡し合格して、はじめて引き渡せる

積算に使える時間は長くありません。公告を見てから動き出すのでは間に合わないので、日ごろの準備がそのまま受注力になります。

入札の方法

  • 一般競争入札資格があれば誰でも参加できる。地域や格付の条件を付けた形が主流
  • 指名競争入札発注者に指名された会社だけが参加できる
  • 随意契約緊急など、競争に適さない場合に特定の会社へ発注する

落札者の決め方

  • 価格競争方式いちばん安い入札者が落札する
  • 総合評価落札方式価格と技術提案を合わせて評価する。品質を確保するための方式
  • 技術提案・交渉方式提案が最も優れた者と、価格や工法を交渉して決める
お金は、完成前から動く 公共工事の代金の受け取り方(割合は一般的な例)
40%前払金 20%中間前払金 残り部分払・引渡し後
  • 前払金着手時。材料や協力会社への支払が先に出ていくため
  • 中間前払金工事の途中で請求できる
  • 竣工金引渡しのあとに残りを受け取る

前払金・中間前払金を受け取るには、保証事業会社の保証が要ります(公共工事の前払金保証事業に関する法律)。

04 — CIVIL ENGINEERING

土木工事の流れ。

道路舗装工事の例

道路舗装を例に、順番に見ていきます。舗装は一枚の板ではなく、役割の違う層を重ねたものです。上から順に荷重を分散させ、いちばん下の地面(路床)に無理をさせない造りになっています。

道路の断面 上から順に。交通量の多い道路では、表層と基層の間に中間層を入れます
表層車が直接走る面。雨水を流し、すべりにくくする
中間層交通量の多い道路で、荷重を均一に伝えるために入れる
基層表層を支え、路盤へ荷重を渡す
上層路盤荷重を広げて下層へ伝える
下層路盤さらに広げて、路床に伝える
路床もとの地盤。ここを平らに締め固めるのが土工事

舗装がひび割れたり、わだちができたりするのは、上の層だけの問題とは限りません。下の層や路床が原因のこともあります。

着工から引渡しまで 道路舗装工事の例
  1. 01事前調査現場の条件と、契約の条件を調べる
  2. 02施工計画書工事概要・工程表・現場組織表をまとめる
  3. 03準備工標識・予告看板の設置、近隣へのお願い、資材置き場の確保
  4. 04土工事掘削して、路床を平らに締め固める
  5. 05路盤工事砕石を下層・上層の順に敷いて転圧する
  6. 06表層工事アスファルト混合物を敷き、ローラーで締め固める
  7. 07区画線工事センターラインや横断歩道を引いて仕上げる
  8. 08完成検査・引渡し発注者の検査に合格して引き渡す

つくった後も、仕事は続く

ひび割れ・わだち掘れ・ポットホールが出たら補修します。軽ければ 切削オーバーレイ(表面を削って敷き直す)、傷みが深ければ 打換え(路盤まで直す)、表面だけなら オーバーレイ(上から重ねる)。

土木工事の規模

2024年度の土木工事の建設投資は約 25.8兆円 の見通し。うち公共工事が約18.6兆円、民間工事が約7.2兆円です。

05 — SITE MANAGEMENT

現場管理の、5本柱。

現場では、発注者・工事監理者・元請・協力会社がそれぞれ動いています。全体がうまく進むように指揮するのが現場管理で、元請の施工管理技術者の仕事です。内容は5つに分かれます。

工期内に、設計どおりの品質で、安全に完成させる

  • 品質Quality設計図書や仕様書どおりの物を造る。材料の試験、施工の試験を行う
  • 原価Cost実行予算を組み、超えないように資材と機械を手配する。毎日の実績を歩掛と見比べる
  • 工程Delivery工程表を作り、月・週の目標に落として進み具合を管理する
  • 安全Safety墜落・落下、熱中症などを防ぐ。協議会を組織し、教育と巡視を行う
  • 環境保全Environment騒音・振動・濁水を抑える。近隣へ作業予定を伝える

土台は、現場のコミュニケーション(発注者・協力会社・近隣の方々)

頭文字をとって QCDSE と呼びます。どれか1本が欠けると、上の板は傾きます。工程だけ守って品質が落ちる、原価だけ見て安全がおろそかになる。現場で起こるのは、たいていこの傾きです。

06 — SAFETY

安全は、いちばん上にある。

建設業の現場では、元請と協力会社の作業員が入り混じって働いています。指示が伝わりにくく、災害が起きやすい。だから元請には、協力会社の作業員まで含めた安全衛生管理体制を整える義務があります(労働安全衛生法第29条〜第31条)。

安全施工サイクル 毎日、この順番でまわします
  1. 01安全朝礼全員集合。当日の予定、危険な作業、立入禁止場所を伝える。ラジオ体操で体と気持ちをそろえる
  2. 02安全ミーティング(KY)班ごとに、これからの作業にどんな危険があるか、どう防ぐかを確認する
  3. 03作業開始前点検自分の作業場所と工具を、指差呼称しながら確認する
  4. 04作業中の巡視元請の安全担当が見てまわり、指示は文書で残して是正を確認する
  5. 05安全工程打合せ元請と各社の職長で、当日と翌日の作業を確認する
  6. 06片付け・終業確認持ち場を整頓し、元請が作業終了を確認する

毎日のサイクルに加えて、毎週(週間点検・一斉片付け・災害防止協議会)と毎月(月次協議会)の活動があります。

ハインリッヒの法則 1件の重大事故の下には、同じ原因のこれだけがある
1重大な事故
29軽い事故
300ヒヤリ・ハット(怪我に至らなかった)

だから、怪我をしなかった「ヒヤリとした」を朝礼で報告します。300を潰すことが、1を防ぐ唯一の方法です。

毎日やっていること

  • 指差呼称対象を見て、指を差して「○○ヨシ!」。声と動作を足すと、見落としが減る
  • 5S整理・整頓・清掃・清潔・躾。片付いた現場は、それだけで事故が減る
  • リスクアセスメント危険を洗い出し、大きさを見積もり、優先順位を付けて対策する(安衛法第28条の2)
  • 熱中症対策WBGT値(暑さ指数)を実測し、基準を超えたら対策。2025年の職場の熱中症は1,803人で過去最多、死亡者は建設業がいちばん多い

災害が起きると、どうなるか

負傷した本人と家族の人生が変わります。現場は再発防止策を講じるまで再開できず、公共工事の入札参加停止を受けることもあります。会社が失うものも、取り返しがつきません。

一人親方も守る対象

一人親方は事業主であって労働者ではありません。ただし2023年4月から、危険有害な作業を請け負わせる場合は、労働者と同等の保護措置が義務づけられました。

出典

数値は出典の公表時点のもので、制度は改正されます。実務では必ず最新の法令・通達をご確認ください。仕事の中身は仕事を知る、入社後の学び方は成長を知るもあわせてご覧ください。